タイム・シップ

今日は時の記念日だそうです。1920年に制定されたので今年で100回目の時の記念日だそうで、国立科学博物館ではそれを記念した展示も行われているようです。そんなわけで今回は時間SF「タイム・シップ」を紹介したいと思います。 この本はH・G・ウェルズの書いた長編小説「タイムマシン」の続編として書かれ、タイムマシン刊行100周年の1995年に発表されました。もちろん作者は別人ですが、遺族が認めたため正式な続編とされています。 元ネタの「タイムマシン」も時間SFの名作ですので簡単に紹介しますと、19世紀のロンドン、とある宴席に招かれた語り手は主催者「時間旅行者」から奇妙な話を聞かされます。彼は時間移動装置、「タイムマシン」を発明し、それによって遥かな未来を旅してきた、というものでした。100年前の社会の延長線上として描かれた未来世界は一度読む価値があるでしょう。 話を「タイム・シップ」に戻すと、この物語は「時間旅行者」が19世紀ロンドンに戻ってきたところから始まります。未来世界で彼はウィーナという人物と出会いますが、結局は彼女を救うことができず、失意のまま時間を遡行し戻ってきました。そのため彼はタイムマシンを修理し、再び未来世界を目指します。しかし加速していく時間の中で彼が見たのは、季節の変化が消え、太陽が爆発し暗くなるという最初の時間旅行とは全く異なる光景を目にします。最初の時間旅行の際には頭脳を持ちながらも凶暴な性質を持っていた未来人類、モーロック族がこの時間軸では驚異的な頭脳と尽きない探求心の持ち主となり、ダイソン球の建設に成功していたのです。 こうして時間旅行者モーゼルと、モーロック族のネボジプフェルの時間旅行が始まります。タイムマシン発明以前に戻り、発明を阻止しようとする彼ですが、第1次大戦の終わらない世界からやって来たイギリス軍の時間航行戦車が現れ、未来がさらに変化したことを知ります。 タイムマシンを手にした時、たいていの物語では歴史上の瞬間やちょっとした未来、あるいは後悔した瞬間に行こうとしますが、もっと昔に戻れるのではないか、もっと未来に行けるのではないか、と思ったことはないでしょうか?この物語では話が進むほどに遥かな未来と過去を行き来し、様々な姿に変化し驚異的な文明を築いた人類たちと出会っていきます。そして物語の終わり、変わり果てた人類によって作られた究極のタイムマシンを使いビッグバンのその昔へ向けて遡行する最後の時間旅行が始まります。 元になった「タイムマシン」も現代でも十分通用する面白さを備えた作品ですが、この物語はそれに加えて改変される未来を文明そのものの変化として描き、スケールをどんどん大きくしていきます。そこで描かれる未来の人類と「タイムマシン」で描かれる未来人類のありようと比較してみると、100年の間でどれほどの変化があったのか感じられるのではないでしょうか。 タイムマシンの続編としても一つの時間SFとしても素晴らしい完成度を誇り魅力的な世界をいくつも見せてくれる本作、ウェルズのタイムマシンを未読の方はぜひ一緒に読んでみてはいかがでしょうか。 https://www.amazon.co.jp/dp/4150120080/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_Cap4EbKGH01HNwww.amazon.co.jp https://www.amazon.co.jp/dp/B00H6XBANU/ref=cm_sw_r_tw_dp_U_x_vbp4Eb41Z6GBXwww.amazon.co.jp