ヴィリコニウム 感想

ヴィリコニウム パステル都市の物語 を読み終えた。 帯にはスチームパンクの祖型、風の谷のナウシカの先行作など魅力的な文言が並んでいる。 4本の短編と1本の中編からなる形式で、午後の文明と呼ばれる絶頂期の文明が衰退したのち、残された都市ヴィリコニ…

歴史改変SF パヴァーヌ

キース・ロバーツ著の小説、「パヴァーヌ」を読んだ。 www.chikumashobo.co.jp パヴァーヌとは16世紀ヨーロッパの行列舞踏のことらしい。 ja.wikipedia.org 16世紀にエリザベス女王が暗殺されスペイン無敵艦隊によってイギリス、欧州全土がローマ法王の支配…

世代宇宙船を扱ったSF小説

タイトル通り、これまで読んできた中で世代宇宙船を扱ったSF小説をざっくりとまとめていきます。 宇宙の孤児 ハイラインの書いた世代間宇宙船ものの大本といえる一冊。 長い旅路の中でかつての知識は失われ、人々は自分たちの住む場所を「船」と呼ぶが船が何…

天涯の砦

今回は同じく事故に見舞われた宇宙ホテルを舞台としたSF小説、「天涯の砦」を紹介したいと思います。 物語の舞台は宇宙ステーション「望天」。最新の宇宙ホテルとして盛況な宇宙ステーションですが、破滅的な事故が発生、ばらばらに分解し宇宙を漂流すること…

地球外少年少女

最近公開されたSF映画、「地球外少年少女」を見てきましたが、近未来の現実的な宇宙で繰り広げられる冒険活劇として素晴らしい出来栄えでした。 地球外で生まれた15人の子供のうち一人である相模登矢を中心に少年少女が宇宙ホテルを襲った未曽有の事故を切り…

プロジェクト・ヘイル・メアリー

お久しぶりです。 今回は「火星の人」(オデッセイというタイトルで映画化)、「アルテミス」の著者アンディ・ウィアーの最新作、「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を紹介しようと思います。 主人公はある日、すべての記憶を失ってベッドの上で目を覚まし…

夜の声

今回はSFから少々離れて東京創元社の復刊フェアで復刊されたホラー短編集「夜の声」を紹介しようと思います。 以前同じ作者の書いた「幽霊狩人カーナッキの事件簿」を紹介しましたが、この短編集では作者ホジスンの船乗りとしての経験をもとに書かれた海洋系…

ダイヤモンド・エイジ

そんなわけで今回は以前紹介したスノウ・クラッシュの作家のサイバーパンクSF、「ダイヤモンド・エイジ」を紹介しようと思います。 タイトルにあるダイヤモンド・エイジとはナノテクノロジーの進歩した新時代のこと。ナノテクによってダイヤモンドを建材とし…

楽園残響

今回は「楽園追放」の公式続編小説「楽園残響」を紹介します。本編の映画を見た後に是非読んでみてください。 とはいえこれは続編であり、物語のあらすじを語った時点で映画のネタバレになってしまいます。 そんなわけでネタバレをさけつつ興味を持ってもら…

遥かなる星

今回は未完の歴史改変宇宙開発SF,「遥かなる星」全三巻を紹介しようと思います。 作者である佐藤大輔は仮想戦記作家として有名な人物ですが、シリーズものを途中まで書いて投げ出す悪癖で知られており、残念ながら本シリーズも3巻までで中断しています。また…

スペース・コロニー 宇宙で暮らす方法

今回は宇宙物の趣向を変えてノンフィクション、「スペース・コロニー 宇宙で暮らす方法」を紹介しようと思います。 今年の5月に発売されたブルーバックスで、現在研究中の宇宙で暮らすための技術が著者の研究を含め紹介されています。 第1章はこれまでの宇宙…

宇宙戦争1941

さて、今回はついさっき読み終わったSF仮想戦記シリーズ「宇宙戦争1941」「宇宙戦争1943」「宇宙戦争1945」を紹介しようと思います。 物語の始まりは日本軍の真珠湾攻撃から始まります。アメリカの太平洋艦隊を攻撃するため真珠湾に向かった日本軍でしたが、…

造物主の掟

さて、時間が空いてしまいましたが二連続でホーガンを紹介したので今回もホーガンの代表作の一つ、「造物主の掟」(ライフメーカーの掟)を紹介しようと思います。 はるか昔、異星人によって作られた採掘用の無人宇宙船は土星のタイタンに着陸し、採掘作業用…

未来の二つの顔

今回は前回に引き続きJ・P・ホーガンのSF小説、「未来の二つの顔」を紹介しようと思います。 人類の生活圏が月面まで広がった未来、HESPERというAI搭載コンピュータネットワークが人類の生活を支えていました。 しかしHESPERが本来軌道上に物資を打ち上げる…

星を継ぐ者

今回紹介するのはJ・P・ホーガンのSF小説、「星を継ぐ者」です。 宇宙を舞台としたSFの中ではかなり有名な一作で、日本で漫画化もされています。 SF的なありえない謎、それを確かな知識と推論を駆使して鮮やかに解いていき途方もない真実にたどり着く、科学…

大日本帝国の銀河

今回紹介するのは「大日本帝国の銀河」です。 前回一月に第一巻を紹介しましたが、第二巻が発売されました。今後も三ヶ月ペースで刊行される予定です。 さて、一巻二巻まとめてあらすじを紹介しますと、日中戦争、太平洋戦争の時代を舞台にした歴史改変、フ…

ペルディート・ストリート・ステーション

特集を完結させないままなあなあで終わるのもよくないので今回「ペルディート・ストリート・ステーション」を紹介してスチームパンク特集を終わりにしようと思います。 さて、ペルディート・ストリート・ステーションは僕がスチームパンクの中で一番紹介した…

黒博物館 スプリンガルド

スチームパンク特集第6回は趣向を変えて漫画「黒博物館 スプリンガルド」を紹介しようと思います。 第2回で紹介した大英帝国蒸気奇譚でも出てきたバネ足ジャックを中心としたサスペンスです。 バネ足ジャックはロンドンでかつて実際に話題になった実在の怪人…

スチームオペラ

一日空いてしまいましたが第5回はミステリとスチームパンクを掛け合わせた一編、「スチームオペラ」を紹介しようと思います。 蒸気機関が発達した世界、エーテルが実在しそれを利用した空中船が空を飛ぶ巨大都市、そこではエマという少女が高名な冒険家であ…

リヴァイアサン:クジラと蒸気機関

第4回は「リヴァイアサン:クジラと蒸気機関」から始まる三部作を紹介しようと思います。 遺伝子操作された生物を産業の基盤とするイギリスやフランスを中心とした「ダ―ウィニスト」、蒸気機関やディーゼル機関を駆使するドイツがメインの「クランカー」の二…

屍者の帝国

第3回は伊藤計劃と円城塔の共作、「屍者の帝国」を紹介したいと思います。 ヴィクター・フランケンシュタインによる死者蘇生技術が一般化し、死者が一般艇な労働力として使われるようになった時代、ロンドン大学の医学生、ジョン・ワトソンは政府の諜報機関…

大英帝国蒸気奇譚

第2回はスチームパンクとタイムトラベル、パラレルワールドを組み合わせたSFシリーズ、「大英帝国蒸気奇譚」を紹介したいと思います。 この小説は「バネ足ジャックと時空の罠」「ねじまき男と機械の心」「月の山脈と世界の終わり」の三部、すべて上下巻に分…

ディファレンス・エンジン

第1回はサイバーパンクの創始者、ウィリアムギブスンと同じくサイバーパンク小説の名手、ブルース・スターリングの共著「ディファレンス・エンジン」です。 チャールズ・バベッジの解析機関、と言えば皆さん一度は聞いたことがるかもしれません。いうなれば…

夢見る葦笛

今回は短編集、「夢見る葦笛」を紹介したいと思います。 同じ作者の短編集、「リリエンタールの末裔」を紹介しました。この短編集では人と科学技術が互いに影響を与えお互いが変化していく様を描いていましたが、この短編集では人と人でないものとの交流、そ…

冬の巨人

今回はSFというよりかは幻想小説的な側面の強いライトノベル、冬の巨人を紹介しようと思います。 千年にわたって広大な雪原をさまよい続ける存在「巨人」、その曲がった背中の上には熱を取り出すための穴が穿たれ、そのうえで人々は街を作り暮らしていました…

太陽の中の太陽

今回はSFならではの変わった世界を探検する一作、「太陽の中の太陽」を紹介したいと思います。 物語の舞台はヴェガ星系、外縁部の軌道上にはかつて設置された「ヴァーガ」と呼ばれる地球サイズの気球のような構造物がありました。 構造物の中では数々の人工…

ジェリーフィッシュは凍らない

今回はSF風味の混じったミステリ、「ジェリーフィッシュは凍らない」を紹介したいと思います。 中身が真空の気泡のような新素材を使って作られた新型飛行船ジェリーフィッシュ、その開発者であるファイファー教授たち6人は新型ジェリーフィッシュの長距離航…

ストーカー

早川書房で出版されているSFシリーズ、裏世界ピクニックがアニメ化されましたね。現在火曜夜に放送中です。みんな見てね。 そんなわけで今回は裏世界ピクニックのオマージュ元のロシアのSF小説、「ストーカー」を紹介したいと思います。 ある時何の前触れも…

大日本帝国の銀河

あけましておめでとうございます。 今回は以前紹介した「星系出雲の兵站」の著者、林譲治の新シリーズ、「大日本帝国の銀河」を紹介しようと思います。 始まりは昭和15年6月、秋津俊雄は電波兵器の研究を名目に和歌山県で電波天文台の建設に取り組んでい…

宙へ参る

なんかそういう気分なので今日は漫画の紹介をします。 今回紹介するのはSF漫画、「宙へ参る」です。 脳以外何でも交換できる時代、脳の病気で死んだ夫の葬式を上げた鵯ソラは夫の遺骨を義母のいる地球へと持っていくためスペースコロニーから地球への旅行を…