セミオーシス

今回は植物型の知的生命体とのファーストコンタクトを何世代にもわたって描いた連作短編集、「セミオーシス」を紹介したいと思います。 舞台は遥か彼方の惑星、どうやら人類は危機に瀕したか、一部の人間が地球外を目指したのか、詳しくは語られませんが人間の一団が植民可能なとある惑星に降り立ちます。様々な生物がすむ惑星で苦労しつつもどうにか定住を始めた彼らでしたが、そこで古代にあったと思われる文明の遺跡を発見します。また、この世界に繁殖している竹のような植物が知性を持っていることにも気づくのでした。 この物語の特色は、植民した人類とこの惑星の知的生命である竹との交流を7世代、100年以上にわたって描くことです。地球に対しそれぞれの思いや思想を持つ第1世代と、地球を知らずこの星を故郷と思うそれ以降の世代では価値観も異なり、人口の安定しない過渡期の世代では孤独な一生を送らざるを得ない人物なども現れます。そんな彼らがそれぞれの思惑を抱えながらこの星の先住存在である竹と否応なしに共存を迫られていきます。 この植物知的生命体ですが、毒物を分泌したり動物を家畜化して使役しているあまり友好的ではない存在です。毒物だけならまだよいですが、麻薬のような物質を蓄えた実を作ることで人間を虜にするなどの手段を駆使し、交流が進めば頭脳を活性化する物質や感情を落ち着ける物質などを含んだ実を実らせるなど狡猾になっていきます。また植物群全体として知性を持つため不死である点も見逃せません。人間のことも基本的には使役動物とみなしていますが、長年をかけてこちらの条件を飲ませ、思考を変えさせていくことになります。 お互いに利用しあい、腹の内を探りながら信頼関係を気付いていき、一方統一された存在ではない人間は自らの内部でも分裂を起こしたりします。そんな異星で生き残ろうと足搔く人類7世代の物語是非読んでみてください。 www.hayakawa-online.co.jp