ウェイプスウィード ヨルの惑星

今回は雰囲気を変えて「ウェイプスウィード ヨルの惑星」を紹介したいと思います。 もともとは年間日本SF傑作選という毎年刊行される短編集(最近辞めてしまったみたいですが)に収録されていたウェイプスウィードという短編を連作短編の形で長編化したものです。 遠未来の太陽系、人類は地球を離れ各惑星や小惑星に居住していました。地球は環境保護のために立ち入りが制限され、地球を離れなかったわずかな部族が生活していました。 主人公はそんな惑星に住む巫女のヨル、木星出身の科学者ケンガセンの二人です。環境激変の結果大部分が海に沈んだ地球で最大の生物となったのがエルグレナと呼ばれるミドリムシの変異体であり、様々な形で惑星全体を覆っています。ケンガセンたちの研究グループはこの生物の研究のため地球に降りる許可を得て降下艇で着陸を試みますが、原因不明の事故により破壊され、ケンガセン以外は死亡してしまい、墜落地点から最も近いヨルの島に救援要請がなされます。 一方地球に住むヨルの部族で科学を学ぶことができるのは巫女のヨルだけでした。好奇心旺盛ながら科学を知らない村人たちに相手にされず飽き飽きしていたヨルは科学者のケンガセンと意気投合していきます。 そして彼らの調査目標である菌類とエルグレナの共生体が作り上げる巨大な海中の花、ウェイプスウィードに向かうことになりますが、そこでの発見は次第に人類に大きな影響を及ぼしていくことになります。 人類が新たな知性体と出会う、いわゆるファーストコンタクトものなのですが、ファーストコンタクトに至るまでの過程がメインで描かれるのが特徴的な一冊です。 またキャラクターもたっていて読みやすく、SF的な設定もしっかり練られているので夏休みに少しSFを読んでみようかなと思った人にもお勧めしたい一冊です。 www.hayakawa-online.co.jp