白熱光

今回は前回名前だけ出てきたグレッグ・イーガンのSF,「白熱光」を紹介したいと思います。 イーガンは数学の博士号を持っている作家で数学や物理学の知識を駆使した独自設定の世界を展開することで有名です。この白熱光も例にもれず高重力の星を回る星での物理現象の実験などわかりにくいシーンがいろいろ出てきますが、純粋に物語としても面白いです。 前回も紹介したように、白熱光の舞台は数多の銀河種族たちが築いた巨大ネットワーク、融合世界(アマルガム)が舞台。そこに住む主人公たちはある日いつもは銀河中に散らばっているけれど数千年に一度一か所に集まるという種族の人物に話しかけられます。その人から融合世界からの一切の干渉を拒んでいた孤高世界から孤高世界にはまだカタログに載っていないDNA基質の生物が存在するというメッセージが送信されたと聞き、主人公ラケシュたちは孤高世界を目指します。 一方孤高世界に住む種族のロスという女性はある日ザックという物理法則を研究する奇妙な老人に出会います。 奇数章ではラケシュたちの孤高世界の謎を解き明かす冒険が、偶数章ではロスたちの物理法則を探求する物語が描かれます。 ロスたちの発見は最初は古典物理学から始まるのですが最後には相対性理論まで行くのでかなり難解なものになります。それでも小惑星内部に住んでいるので天体観測ができない中、様々な実験を通して自分たちが巨大な重力を持つ星の周りを公転していることを発見していく様子を見るのは興味深いです。 ラケシュたちもまた孤高世界で巨大望遠鏡を建造し一つの小惑星を発見します。そして孤高世界の住人との接触していきます。 先に述べたとおり、イーガンは科学的な正確さに徹底的にこだわる作家なので実験の詳細などについてもとても細かく描写しますが、全体的にはミステリー調で展開するラケシュたちのパート、科学するとはどういうことかを突き詰めていき、発見する楽しさや興奮を余すとこなく描いていくロスたちのパート、どちらも十分に楽しめます。 何を言っているのかわからなくなっても解説のサイトがあるので安心です。 ita.hatenadiary.jp いろいろ言いましたが、イーガンの話は基本的に知性を持った生物の目指す幸福とは何かや新しいものを発見する喜びなどを緻密に描いてくれる作家なので一度読んでみてほしいと思います。 www.hayakawa-online.co.jp