バビロニア・ウェーブ

今回は最近紹介が減ってきた宇宙物のSFを紹介したいと思います。 「バビロニア・ウェーブ」は太陽系のそばに発見された強力なレーザー光束、バビロニア・ウェーブをめぐるハードSFです。 深宇宙探査機の連絡から太陽系から3光日の位置にバビロニア・ウェーブが発見されてから、人類はその光束に鏡を挿入し取り出すことで無限に近いエネルギーを入手することが可能になりました。また太陽系全域に鏡反射させたレーザー光線網を張り巡らすことによってレーザー帆船で高速な行き来も可能になっています。 ある日宇宙船の操縦士マキタはバビロニア・ウェーブの近傍にある送電基地に緊急の貨物を運ぶため向かっていたところ、目的地からの応答が途絶し推進用レーザーが止まってしまいます。 不審に思いながらも慣性航行を続ける彼の前に高速調査艇に乗って表れたのはバビロニア・ウェーブの発見者その人でした。緊急脱出艇で教授と貨物とともに送電基地にたどり着いたマキタはダムキナ計画という謎の計画に巻き込まれていきます。 作者の堀晃はもともと繊維メーカーに勤めており、科学への造詣が深いことでも有名な作家で、この物語でも科学的なディテールを楽しめます。それと同時に太陽系から3光日離れた場所での連続不審死という究極のクローズドサークルなミステリの趣もあります。 ダムキナ計画の謎、マキタが運ぶことになっていた貨物、送電基地で相次ぐ不審死、そしてバビロニアウェーブとはそもそも何なのか、SF的、ミステリ的な謎が幾重にも提示されしっかりと解決されていく様を味わえる作品はそう多くないでしょう。 www.tsogen.co.jp