ニューロマンサー

今回はサイバーパンクの始祖にして金字塔、「ニューロマンサー」を紹介しようと思います。 それはともかく、サイバーパンクとは科学技術が発達し、情報化や人体改造などが一般化した未来を描いたジャンルを指します。 幸福とは言えない未来を描くSFとしてはディストピアが真っ先に思い浮かぶと思いますが、ディストピアがどちらかと言えば国家などの強大な権力によって統治された秩序ある世界であるのに対し、サイバーパンクではおもに企業を主体とした乱立する勢力たちが権力を奪い合う混沌とした世界を描きます。 インターネットが一般化したことや「パンク」の名の示す通り本来反体制、反主流であったものが流行によって自身が一種の権威、主流になってしまったことによって衰退したともいわれるジャンルですが、今でも根強いファンがおり、映画では「ブレードランナー」、漫画・アニメでは「攻殻機動隊」などが有名ですね。今回紹介する「ニューロマンサー」はあらゆるサイバーパンクの始祖となったとされる作品です。 物語は世界有数の闇クリニックが立ち並ぶ都市、チバ・シティから始まります。ハッカーであるケイスは契約違反によって脳神経を破壊する毒素を打たれネットと脳を直接リンクさせる能力を失ってしまいます。自暴自棄になってドラック漬けの生活を送る彼の前に、全身に身体改造による武器を仕込んだストリート・サムライ、モリイが現れ、アーミテージという男とジャックイン能力の復活治療と引き換えにこの世界のインターネット、マトリックス空間でも最も厳重に守られたコンピュータへの侵入を依頼されます。 物語は次々舞台を変え、日本からアメリカの貧困都市「スプロール」、イスタンブールから果ては植民宇宙コロニーへと展開していきます。 サイバーパンクの魅力の一つに過剰ともいえる描写の量があります。多くの物語では設定の説明の多い話はつまらないとか蛇足とか言われがちですが、ニューロマンサーでは架空の武器、習慣、日常的に使う機械、ドラッグなどなどを事細かに描写していくことでそれらに説得力を与えています。また、文章から溢れる情報に溺れながら先に進んでいくのは情報過多なサイバーパンクの世界と共鳴します。まあ僕が設定大好きな人間なのはあると思います。独特な文体も僕は好きですが賛否が分かれるところではあります。 ちなみに続編に「カウント・ゼロ」と「モナ・リザ・オーヴァドライブ」がありますのでそちらも是非。

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