大英帝国蒸気奇譚

第2回はスチームパンクとタイムトラベル、パラレルワールドを組み合わせたSFシリーズ、「大英帝国蒸気奇譚」を紹介したいと思います。 この小説は「バネ足ジャックと時空の罠」「ねじまき男と機械の心」「月の山脈と世界の終わり」の三部、すべて上下巻に分かれているので計6巻で構成されています。 3部を通して主人公は実在した冒険家、リチャード・バートンです。第一部、バネ足ジャックと時空の罠はバートンが史実の通り、ナイル川の源流を探す冒険から帰還したところから始まります。とはいえ史実とはだいぶ異なる歴史を歩んでおり、1840年ヴィクトリア女王暗殺が成功したためヴィクトリア朝は始まらず、ロンドンでは蒸気機関と改造生物が闊歩しています。 そんなロンドンに帰還したバートンはなぜかロンドンにはびこる様々な問題を解決するための密偵に任命され、ロンドン各地に出没するという人狼の謎を解明するよう命じられます。 早速調査を始めた矢先、彼を敵視する謎の人物、「バネ足ジャック」が襲い掛かります。 第一作ではバネ足ジャックとマッドサイエンティストの陰謀を軸に物語が繰り広げられますが、第2部、第3部ではますますスケールが広がり最終的にはオーバーテクノロジーの兵器がいくつも投入された英独戦争がはじまります。 さて、スチームパンクと言えば蒸気機関を駆使した様々なガジェットですが、本作では蒸気機関ともに改造生物の技術も発達しており、巨大化させた馬など様々な用途に応じて特定の生物が生み出されています。そして第2部、第3部では巨大化させた昆虫の中身をくりぬいて蒸気機関を入れた乗り物なども登場してきます。個人的に気に入っているのは主人公が途中で使用する毒針を発射する改造サボテンの銃、最終巻でドイツが使用する中が要塞になっている巨大なボールです。他にも面白い機械、改造生物が出てくるのでそれを見ているだけでも楽しめます。 SFとしてみても、タイムトラベルや歴史改変、並行世界など様々な要素が盛り込まれた作品で、ロンドンを舞台とした陰謀劇が繰り広げられる1部と2部、バートンが冒険家として再びアフリカを冒険する3部など、物語のバリエーションが多く、ボリュームがあっても飽きることはありません。

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