屍者の帝国

第3回は伊藤計劃円城塔の共作、「屍者の帝国」を紹介したいと思います。 ヴィクター・フランケンシュタインによる死者蘇生技術が一般化し、死者が一般艇な労働力として使われるようになった時代、ロンドン大学医学生ジョン・ワトソンは政府の諜報機関「ウォルシンガム機関」から諜報員に任命されます。 そしてワトソンと彼に与えられた記録用屍者フライデー、冒険家バーナビー大尉とともにヴィクター・フランケンシュタインの残した「意志を持った屍者」を作り出す方法の記された「ヴィクターの手記」を探す旅が始まります。 本来伊藤計劃が3番目の長編として執筆していましたが、プロローグを書いた段階で亡くなってしまったため、友人であった円城塔が遺稿を引き継ぎ完成させたものが本書になります。 伊藤計劃は映画やゲームに大きく影響を受け、映像的で読みやすい描写をする作家だったのですが、逆に円城塔は以前紹介したように小説でしかできないような表現を多用し悪く言えば読みづらい作家ですので、プロローグが終わると割と読みにくくなってしまうのですが、死体が当たり前のように動き回り、巨大解析機関や海底ケーブルによる高速通信が大々的に行われている(まあ現実でも1850年代に大西洋横断電信線は開通しているのですが)世界でヴィクターの手記を追いながら世界を旅する魅力的な一作になっています。 終盤では潜水艦ノーチラス号やロンドン塔に作られた巨大解析機関なども登場します。 この作品は映画化されており、貴重なスチームパンクのアニメ映画となっています。原作からだいぶストーリーは変わっているのですが、こちらはこちらで十分面白いのとやはり映像で動く機械や労働力として働く死者が見れるというのは大きいです。 www.kawade.co.jp project-itoh.com