リヴァイアサン:クジラと蒸気機関

第4回は「リヴァイアサン:クジラと蒸気機関」から始まる三部作を紹介しようと思います。 遺伝子操作された生物を産業の基盤とするイギリスやフランスを中心とした「ダ―ウィニスト」、蒸気機関ディーゼル機関を駆使するドイツがメインの「クランカー」の二つの派閥に分かれた1914年のヨーロッパでオーストリア大公夫妻の暗殺事件が起こります。両親を暗殺された公子アレックは自身も何者かに命を狙われ、数少ない臣下と二足歩行ロボットに乗り込み宮殿を脱出します。 一方のロンドン、空にあこがれる少女デリンは男装して英国海軍航空隊に志願、どうにか合格し大英帝国の誇る巨大飛行獣、リヴァイアサンの乗組員に任命されます。 リヴァイアサンダーウィンの親戚で著名な遺伝子学者であるノラ・バーロウ博士を乗せ、親ドイツ化がすすむオスマン帝国の皇帝を説得するよう命を受けます。 しかしリヴァイアサンは攻撃を受けアレックの避難した雪山の隠れ家の付近に墜落、彼らは運命的な出会いを果たすことになります。 さて、ここまで紹介したとおり、王道のボーイ・ミーツ・ガールのストーリーが展開されます。王道の物語というのはやはり読んでいて安心感がありますし、細かい設定や描写もしっかりとしており、主人公たち以外のキャラクターも立っていて、全体的にとても読みやすく面白い作品に仕上がっています。 最初に説明したとおり、改造生物を駆使するイギリス側と機械技術を駆使するドイツ側に分かれているのでスチームパンク色は薄いと言えば薄いのですが、改造生物たちも、第1巻のタイトルになっているクジラを改造し巨大飛行船のような構造になっているリヴァイアサン、伝言を伝えるトカゲ、鉄並みの強度を持たせた木なかなか面白いですし、機械技術が駆使された都市なども途中で出てきます。 他にもおすすめのポイントとして、巨大飛行獣リヴァイアサンを使って世界をめぐる物語になっていることです。改造生物たちの闊歩するロンドンから機械技術が駆使され歩行機械があるきまわるイスタンブール、機械技術と改造生物が共存する東京、世界最大の機械都市ニューヨークなど、様々な特色を持った都市を旅してまわるので全く飽きません。また旅の途中もしっかりと描写され、飛行船で旅をするワクワク感を存分に味わうことができます。 日本は開国の時機械技術と改造生物技術が同時に流入したという設定のため、途中で訪れる都市の中でもひときわ異彩を放っていて面白いです。また日本軍が使う河童という名前の付いた改造生物兵器がなかなかえげつなくて気に入っています。 それだけでなく、本のあちこちに挿絵が描かれており、奇怪な改造生物やロマンあふれる機械たちを美麗なイラストで見ることもできます。 全三巻、王道ボーイ・ミーツ・ガールに緻密な設定と確かな描写が組み合わさったとても出来のいい作品ですので是非読んでみてください。

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