寄港地のない船

昔から読むつもりで読んでなかった本が新訳版になって本屋で売られていたので今回は思わず買って読んだ「寄港地のない船」を紹介したいと思います。 以前この作者の書いた地球の長い午後を紹介しましたが、今回紹介する寄港地のない船はこの作者の初めて発表した長編です。 舞台はかつて建造された世代間宇宙船。しかしそのことは遥か昔に忘れ去られ、元住人たちは異常発達した植物に囲まれた居住区で原始的な生活を送っています。そんな中ある部族で狩人をしているロイは部族の司祭、マラッパーに誘われ未知の部族「前部人」がいるとされる船の前部を目指す旅に誘われます。 マラッパー達一行は変わり映えのしない植物に覆いつくされた世界を進んでいくうち、船の本来の主であると言われる巨人と出会い、さらに旅を進めるうちについに前部人たちの領域に到達します。ロイ達に比べればまともな生活を送る前部人ですが、この世界が船であることは知っていてもなぜ船が今の状態になったのか、船がどこへ向かっているのかは謎のままです。しかしロイ達との接触を皮切りに次第に状況は変化していき、やがて船の仕組みや過去の悲劇について、そして船を待ち受ける運命を知ることになります。 世代間宇宙船であることが忘れ去られた時代に旅をしてその事実を発見する話は結構ある気がするのですが、具体的な作品名を上げられないのでこの作品以外に知っている人が居たら教えてほしいです。「宇宙の孤児」は今後読む予定です。 宇宙船であることを忘れ去られた世界で読者は理解できるけれど登場人物たちが理解できていない世界の描写や本来とは違う用途に使われる機械など自分好みのシーンが満載でとてもよかったのと、中盤から一気になぜ宇宙船であることが忘れ去られたのか、そしてこれから先船はどうなるのか、についてどんでん返しが繰り返され、テンポよく物語が進んでいくので60年近く前の作品ですがとても読みやすいです。

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