そんなわけで今回はSFではなくオカルト系フィクション、「幽霊狩人カーナッキの事件簿」を紹介したいと思います。 出版は1914年と100年以上前の本ですが訳が読みやすいので今でも普通に面白く読めます。 物語の主人公、カーナッキは心霊現象の解決を専門にしている探偵で、彼の下には様々な依頼が寄せられます。この本はそんなカーナッキの解決した事件をまとめた短編集です。 この短編集の面白いところは本物の心霊現象とトリックを駆使した人為的な事件が混ざり合っていることです。よって読者は最後まで本当の怪奇事件なのか人間の仕業なのかはらはらしながら読むことになります。怪異に見せかけた殺人事件や不可能犯罪はミステリの醍醐味の一つですが、それに本物のホラーが加わる可能性まで混ざるのはこの作品の特有の魅力でしょう。 それともう一つ個人的に好きなのはカーナッキ本人に特別な能力が何もないという点です。怪異に対しては時折言及されるいくつかのオカルト文献などから得た知識によって立ち向かいますが、彼自身に人に見えないものを見たりそれらに干渉したりするような超常の力はなく、しかも人並みに怖がりなので(場数を踏んでいるので冷静に対処はしますが)毎回そこそこびくびくしながら対処に当たります。一般人よりは詳しいけれど超力者でもないプロとして怪事件に挑むのは読んでいてとても面白いです。 個人的に好きな短編を上げておくと 一番最初の一晩こもると短剣に刺される礼拝堂の謎を解く、この短編集の魅力をわかりやすく伝えてくれる一編、礼拝堂の怪、作者のホジスンの船員としての体験がふんだんに盛り込まれた魔界の恐怖、真空管駆動魔方陣というロマンアイテムが大活躍する異次元の豚あたりでしょうか。 ホジスンはクトゥルフ神話の創始者であるラヴクラフトなどにも影響を与えたとされる作家であり、クトゥルフ神話に興味のある人もその源流となった作品に触れてみると面白いかもしれません。現状紙の本の入手が難しいのですが、電子版の発売が決定しているそうなので発売されたら是非どうぞ。 neunumanumenu.hatenablog.com
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