黒博物館 スプリンガルド

スチームパンク特集第6回は趣向を変えて漫画「黒博物館 スプリンガルド」を紹介しようと思います。 第2回で紹介した大英帝国蒸気奇譚でも出てきたバネ足ジャックを中心としたサスペンスです。 バネ足ジャックはロンドンでかつて実際に話題になった実在の怪人で、有名な切り裂きジャックの数十年前に現れた人物です。突然現れ火を噴きかけたりナイフで刺して逃げる、と言われたり、追跡した警官が数メートルある壁を飛び越えるのを目撃した、といった証言が残されていますが、実際に殺人を犯した切り裂きジャックとは異なり、バネ足ジャックが人を驚かす以上のことをした、という記録はなく、実在したのかも定かではありません。 とはいえそこそこ有名な都市伝説です。 さて、本書ではバネ足ジャックが出現したのは1837年、突然夜道で女性の前に現れかぎづめで脅して去っていく怪人バネ足ジャックについて警察も捜査を始めます。捜査主任のジェイムズ・ロッケンフィールドは有力侯爵ウォルターに目を付け逮捕寸前まで追い詰めますが、突然犯行が止まってしまい逮捕できずにいました。 それから3年、再び現れたバネ足ジャックはただ女性を脅すだけでは終わらず、殺人に及ぶようになります。 漫画自体は1巻で完結する短い作品ですが、刑事ジェイムズや対する侯爵ウォルターなどなかなか癖の強いキャラたちが織り成す物語が1巻に凝縮されており、過不足のない構成によってまとめられているので1巻で必要十分だと言えます。 社会自体が変わっているわけではないのでスチームパンクと呼べるかは(僕の内部基準では)微妙なラインですが、漫画として純粋に面白いです。 1巻の中にミステリ、スチームパンク、猟奇ホラーと様々な要素が詰め込まれながらも見事にまとまっている作品です。 直接的な関連はない第2巻と続編が収録された「黒博物館 ゴーストアンドレディ(上下巻)」も発売されていますので、ぜひどうぞ。 https://www.amazon.co.jp/dp/B00AIKXRAW/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1